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骨粗しょう症などの薬剤によるあごの骨に対する副作用

骨粗しょう症などの薬剤(骨吸収抑制性薬剤)はご高齢になり骨がもろくなった方には非常に有効でありますが、まれにあごの骨に副作用の症状をもたらす場合があります。あごの骨に副作用の症状が出ると、食事など、日常生活や身体の健康に影響をあたえることもあり、注意が必要になります。そのため、これからこれらの薬剤による治療を受ける予定の方、現在治療中の方、また以前に治療を受けたことがある方は歯科医院などを受診する際には必ず担当医にお知らせください

しかし、このあごの骨に対する副作用は予防することができます骨粗しょう症などの薬剤を使用しても、副作用の症状に悩まされない口腔内の環境作りを行いましょう

骨粗しょう症などの薬剤によるあごの骨に対する副作用の症状や治療、予防法などについてご紹介させて頂きます。

症状

あごの骨の炎症(骨髄炎)、あごの骨の壊死(えし)

具体的な症状としては、 歯ぐきの痛み、はれ、歯の動揺、下くちびるのしびれ、あごの骨の露出、歯を抜いた後の治りが悪いなどの症状がみられます。症状が進んでくると、感染したあごの骨に膿がたまり、口腔内や皮膚へ膿の出口ができることもあります。広い範囲に感染が広がると、あごの骨が弱くなり、骨折することもあります。

症状のステージ

症状の進行により、ステージ分類されます。

  • ステージ1

あごの骨の露出(歯ぐきから骨が見えている状態)は認められない。深い歯周ポケット、歯の動揺、口腔粘膜の潰瘍、歯ぐきの

はれ、痛み、膿がたまる、口が開けにくい、下くちびるのしびれなどの症状 がある

  • ステージ2

無症状で感染を伴わないが、あごの骨が露出している

  • ステージ3

感染を伴うあごの骨の露出。あごの骨の露出部に痛みを伴い、膿が出ることもある

  • ステージ4

広い範囲のあごの骨の露出、痛みを認める

あごの骨に症状が出る理由

あごの骨は他の骨には見られない特徴があります。あごの骨には歯があり、これらを支えています。さらに口の内には感染源になり得る、非常に多くの常在菌がいます。そのため、う蝕、歯髄炎、歯の根の先の病気、歯周病の歯があると、その歯を通じて、細菌が骨に感染しやすくなります。また、あごの骨を覆う粘膜は薄いため、義歯による刺激や食事等により物理的なダメージを受けやすく、その傷から感染することもあります。また抜歯などの外科治療により、あごの骨が直接口腔内に露出する機会があり、さらに感染を受けやすくなります。

このように、あごの骨は身体の他の部位の骨と比べると、きわめて感染しやすい環境下にあり、その環境が薬剤の副作用発生に深く関与していると考えられます。

副作用の発症率

 様々な骨粗しょう症などの薬剤があり、飲み薬と注射があります。飲み薬の場合では患者さん10 万人当たり発生率は 1.04〜69 人、注射する場合では患者さん10 万人当たり発生率は 0〜90人とされており、注射の方があごの骨に対する副作用が出やすいということになります。日本口腔外科学会などの調査を元にした報告では、内服薬では1000人に1人、注射薬では10人に1人程度というかなり高頻度に副作用が発症するとされています。

臨床の現場では、年々これらの副作用でお悩みの患者様が増加しており、上記の発症頻度は後者の口腔外科学会の報告の方が臨床的には近いと思います。

リスクのある方

 骨粗しょう症などの薬剤の治療(内服、注射)を受けている患者さんが以下の項目に当てはまると、あごの骨に対する副作用がより発症しやすい可能性があります。

お口の中の状態として

・抜歯、インプラント埋入などの外科手術を行う方

・合ってない入れ歯をお使いの方

・口腔衛生状態の不良、歯周病、歯の根の先に炎症(根尖病巣)のある方

全身疾患

・がんの方

・糖尿病の方

・関節リウマチの方

生活習慣

・喫煙している方

・飲酒している方

併用薬

・抗がん剤を使用している方

・ステロイド剤を使用している方

・がんの治療などで血管新生阻害剤を使用している方

治療

 現在はいろいろな報告がなされていますが、治療ガイドラインとして統一した見解が得られるような有効な治療法が確立されていません。一般的な治療の内容としては、消毒薬による洗浄、消炎鎮痛剤による痛みのコントロール、抗菌剤の投与になります。場合によっては、感染した部分の骨(腐骨)の除去を行います。病気が進行してあごの骨が折れてしまったり、皮膚に瘻孔(膿の出口)を認めたり、広範囲に骨が感染した場合には、あごの骨の手術を行う場合があります。発症すると、なかなか治らないため、長い期間の通院が必要になります。そのため、骨粗しょう症薬のあごの骨に対する副作用が出ないように、予防することが非常に重要となります。

予防

この副作用が一度発症すると根治的に治すことは非常に難しいとされ、日常生活に大変不自由が生じてしまいます。当院のテーマは「口腔ケアから始める健康生活」ですが、やはり「予防」が最も重要であると考えています。

骨粗しょう症の薬を飲む前に、および注射剤を使用する前に歯科医院を受診しましょう。

進行した虫歯や、歯周病、入れ歯による傷から、口腔細菌があご骨に感染します。口腔内の感染源を除去するため、歯科医院を受診し必要があれば歯科治療を受けましょう。

口腔内を清潔に保ちましょう。

ご自身での日々の口腔清掃をきっちりしていただく必要があります。入れ歯を使用している場合は毎日寝る前に入れ歯を外して、入れ歯の清掃をしましょう。

副作用が進行してお口の中に骨が露出、腐骨形成を呈するかたには、継続的な次亜塩素酸水(500ppm程度)での含嗽(うがい)、歯磨きが非常に有効な場合があり、これからの臨床的、基礎的研究が待たれるところです。  

歯科医院で定期的なメンテナンスを受けましょう。

 骨粗しょう症などの薬を飲んでいる間も口腔内の管理が必要です。あごの骨に対する薬剤の副作用は感染が引き金となって発症・増悪します。したがって口腔衛生の改善と感染対策を徹底することが重要です。気軽に相談できるかかりつけの歯科医師を持ち、歯科医院での定期的なメンテナンスを欠かさないようにしましょう。

(参考文献:日本口腔外科学会資料などを参照)

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