お口の中の状態と全身の病気との関係
口は万病のもと
私たちのお口の中に生息している細菌(微生物)は数百種類といわれ、乳酸菌、ヨーグルトなどのCMでおなじみの腸内細菌などと同じように細菌叢(さいきんそう)を構成しています。これらは口腔内フローラと呼ばれ、通常はそれぞれがバランスをとってお口の中に生息しています。
ただし様々な要因によりこのバランスが崩れると、お口の中の細菌(微生物)は図のような全身の疾患、病態を引き起こすことがわかってきました。すなわち「口は万病のもと」です。
当院では歯科治療や口腔ケアにより、お口の中の健康を保持、増進することにより、身体の様々な疾患を防ぎ、健康な生活を維持に貢献することをメインテーマにしております。
すべての歯科治療は予防治療である
近年では「未病」という概念が広まってきました。未病とは、「発病には至らないものの健康な状態から離れつつある状態」を指しています。自覚症状はなくても検査で異常がみられる場合と、自覚症状があっても検査では異常がない場合に大別されます。国内外において、この未病の段階でとどめて、健康な状態に戻すための様々な取り組みが進められています。
この流れを受けて、現在では「病気を治すよりも、病気になりにくい心身をつくることで病気を予防し、健康を維持する」という予防医学的な歯科医療、口腔ケアが最も重要と考えられており、この方向性は今後の高齢化社会においてさらにその進んでいくものと思われます。
すなわちこれからのすべての歯科医療は予防医学的な意味合いがますます強くなることが予想されます。
これまでは歯磨き指導などが予防治療、抜歯などは外科的治療という固定概念に基づく分類がなされ、大学教育や臨床の現場では別々のものとして考えられてきました。
しかし超高齢化社会においてこのような従来の歯科医療に関する考えは、少し時代遅れになってくるかもしれません。私は以前より上述のように「すべての歯科治療は予防治療である」と考えて、臨床を行ってきました。
すべての年代の皆様において、歯を健康な状態で保ち、おいしく食事を召し上がって頂く、楽しく会話をして頂くことが最善の状態です。他のページでご紹介しますが、口から食べること自体がお口の健康を保つ口腔ケアであり、全身の健康の増進につながることがわかってきました。そのためにはこちらでご紹介する歯周病治療が非常に重要です。
残念ながら虫歯になってしまった場合にはレジンや金属などで補填することがありますが、これは進行してさらに悪化しないようにする予防的処置であり、歯を失った場合に行う義歯などによる治療、インプラント治療などは歯が欠損して全身の栄養状態が低下しないようにして、「未病」の状態で保つことであると考えています。
この意味では様々な理由で状態が悪くなった歯を抜く「抜歯」でも、その歯を放置して、骨髄炎などの重篤な状態に悪化することを防ぐ予防治療と考えています。また最近では骨粗鬆症や悪性疾患の治療に用いられる骨を強くするお薬による副作用でお悩みの方が大変増えており、薬剤使用前の予防的スクリーニングの重要性が推奨されています。
ここでは「口は万病のもと」として、お口の中の細菌(微生物)のこと、またこれらにより引き起こすと考えられている様々な病気についてご説明していきます。
お口の中の細菌(微生物)は体の中で最も高密度です